赤を啜り、終焉は虚無と知る
特別企画

台本公開 アンコール4

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その後・・・編

舞台上に走りこんでくるシンシャ
反対側からニールがやってくる

ニール
「うわ!危ないな。」

シンシャ
「あ、ごめんなさい。」

ニール
「いや、大丈夫だけど。忙しそうだな。」

シンシャ
「そりゃそうよ。来週の大陸同盟の代表会議に向けて大忙しよ。あんたとは違うのよ。」

ニール
「俺だってそれなりに忙しいんだぜ。これでも将軍なんだからな。」

シンシャ
「お零れで任命されただけでしょ。」

そこへカーマインがやってくる

カーマイン
「シンシャ、会議の資料はどうなってますか?」

シンシャ
「カーマイン様。すいません、すぐに。」

カーマイン
「いいえ、無理はしないで。手伝えることがあったら言ってね。」

シンシャ
「ありがとうございます。」

ニール
「いよいよですもんね、この大陸が本当の意味で一つになるのは。」

カーマイン
「ええ。あの戦いの後残った国々と何回も話し合いをして、築き上げて来た事です。全ての国がまとまり、互いに助け合い、争いの無い世界を創る。簡単なことでは無いと思っています、でもそれが私の目指す世界ですから。」

ニール
「でもその為に他国に技術提供を無償で行いなんて。シナバー将軍が生きていたら怒るでしょうね。」

カーマイン
「ニール。」

ニール
「あ。」

シンシャ
「え?あ、大丈夫ですよ。兄の事ならもう平気です。それに、あの兄の分まで私がカーマイン様の目指す世界の為に働くって決めたので。」

カーマイン
「シンシャ、ありがとう。それにニール、無償ではありませんよ?」

ニール
「え?」

カーマイン
「産業に必要な資源は採取量を制限する条件を付けてあります。必要以上に資源の確保はしない。私たちはあくまでもこの大地の力を借りているんです。」

ニール
「なるほど。」

カーマイン
「そう言えば、今日もオーカーの姿を観ませんね?」

ニール
「ああ、あいつはまたあそこですよ。」

カーマイン
「そうですか。」

場面変わり、一人の少女が座っている
少女、アリザである
そこに一人の男がやってくる
男、オーカーである

   

オーカー
「アリザ、こんにちは。体調はどうだい?」

アリザ
「・・・。」

オーカー
「今日も聞かせてくれるかな?クリムゾンの事。」

アリザ
「クリムゾン・・・?」

オーカー
「うん。僕も昔クリムゾンに助けてもらったんだ。だから君の話も聞かせてくれるかな?」

アリザ
「わた・・・しは・・・。」

アリザ、たどたどしく、話し始める

   

オーカー
「あれから僕は自分が見た事聞いた事を書き記すことにしました。かつてこの国で何があったのか。バンパイアがいた世界、エカルラート様が生きていた世界。そしてクリムゾンが生きていた世界の事を。カーマイン様には将軍になるように頼まれたけど、辞退させていただきました。僕にはまだ務まらないと思ったんです。そう思いませんか?ソルフェリノ将軍。あなたがしたことも消えることは無いと思います。でも、僕があなたにもらった笑顔も消える事はありません。だから僕はこの笑顔で世界を満たすことが出来たらと思うんです。きっとすぐに変わる事は出来ないと思います。もしかしたら僕たちはもう終わりに向かっているのかもしれません。でも、それでも自分たちが一番いいと思える道を歩いて行こうと決めました。僕の終焉には、笑顔があふれている様に。」

暗転

   

Cast : オーカー ニール シンシャ カーマイン アリザ